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偽史編纂室「陰謀」

 旧ゼノビア王国は、魔導師ラシュディによる国王暗殺と帝国軍の追討によって、一部の裏切り者と逃亡者を除く殆どの王侯貴族を失い、ゼノビア王家による再興は不可能となった。
宮廷占星術師として王の側近として、高い信頼と敬意を受けていた魔道士ウォーレンは、帝国にとって脅威と成る程ではないものの、その高い才能を惜しんだ魔導師ラシュディに命を助けられてハイランド中央政府に置かれていたが、元来の頑固で反抗的な気質と、見込んだほどの潜在能力ではなかったことから、間もなく中央から遠ざけられ、帝国領内最辺境の領主として左遷される。
中央にいる間に、ラシュディの真の狙いが大陸の統一とは異なる所にあると見抜いたウォーレンは、ラシュディの踏み台でしかない帝国の命が長くないことを予測し、辺境ヴォルザークに赴任するまでの間に、自らの星占を用いて大きな運命の星の下に生まれた幾人かの少年少女を選び出し、東部・南部など異郷の地で英才教育を施す。
その後、ウォーレンは、選び出した子供たちの中でも特に優れた才能を持った青年デスティンを、辺境ヴォルザークで僅かに残った騎士団の残党と新たに育て上げた兵士達の指導者として迎え、反乱を起す。更に、時期が来れば、デスティンが実は25年前に殺害されたジャン王子であるとして、新王として迎え、今度は王の後見人や宰相という地位と共に宮廷の高位に返り咲こうと狙っていた。

 帝国との戦いと民衆の解放を続ける中、その勘の良さから義父ウォーレンの狙いに気付いていたデスティンだが、帝国支配の現状と民を率いる指導者の不在を見て、敢えて彼に従い、自ら前線に立ち、実力をつけていった。しかし、スラム・ゼノビアで乳母バーニャからトリスタン皇子の生存を聞き知ると、前線や主力はランスロット、アッシュを始めとした騎士団に任せ、自らは作戦指揮や情報捜査など裏方に多く関り始めていった。
その後、トリスタン皇子が加入すると、デスティンは更に裏方に徹し、皇子を正当な指導者として遇するようになる。マラノで皇子の使いが、デスティン本人を呼び出したのは、ウォーレンとは別に旧王国の残党やレジスタンスを統合し始め、ウォーレンの人柄やそれまでの経緯などかなりの情報を得ていたトリスタンが、デスティンからウォーレンの情報操作や心理的影響を遠ざけるためだった。

 結局、トリスタンはゼテギネアの王として即位し、ウォーレン自身も思惑には及ばなかったものの、魔法団団長という魔道士としての高位を得る。
しかし、新王国建国の2年後、ウォーレンと、その影響を多く受けていた騎士ランスロットはヴァレリアに派遣されて戦死。かつてトリスタン皇子のレジスタンスであったというミルディンだけが、どのルートをとっても生きてゼノビアに戻ることになる。






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