エメラルド (Emerald)
(Be3Al2Si6O18

 緑玉。ベリル(緑柱石)のうち、クロム(Cr)とバナジウム(V)に起因する緑色をしたもの。サンスクリット語のスマラカタ(緑)がギリシア語、ラテン語などを経て現在の名称になったらしい。色が濃く、明度の高いものほど貴重だとされ、緑色でも色が薄い場合や明度が低い場合には、グリーンベリルとして区別されることもある。

 持ち主に富と繁栄をもたらすと云われ、幸運と幸福を暗示する。感情を沈め、心身の能力を高めたり癒す力があり、霊感や直感などと関係が深く、高い治癒能力を持つ石とも云われる。また、木々や若草のような緑色は視力を癒すと云われたことから、眼病にも効くとされ、ローマ皇帝ネロが眼鏡(鏡)として剣闘士の戦いを見るのに使ったと云われる。他にも肝臓病や赤痢、毒虫の刺し傷の治療にも有効だと云われたようだ。
 伝承では、天から落ちるルシファーの冠から落ちたエメラルドが、イエスの最後の晩餐で聖杯として使われたといわれる。また、錬金術の祖とされる伝説的な人物ヘルメス・トリスメギストスによって十二の錬金術の秘密が記され、ピラミッドで発見されたと云われる碑文は、エメラルド製の板に記されていたされ、エメラルド・タブレット(タブラ・スマラグディーナ)と呼ばれる。

 モース硬度は7.5〜8。内部に傷(インクルージョン)の無いものは非常に稀で、内包物や傷があることが本物の証明ともいわれる。通常オイルや樹脂によるエンハンスメント(含浸)によって傷を見えにくくしてるが、傷があるために衝撃に弱く、またエンハンスメントされた部分は乾燥や熱、水分にも影響を受けやすい。


(1) 五月(金牛宮)の誕生石。
(2) 『博物誌』におけるラテン語のスマラグドゥスには二十種の緑色の石が含まれるが、スキタイやエジプトで産出されるものは非常に硬く、叩いても割れないと云われる。おそらくこれがエメラルドであったと考えられる。
(3) 長方形〜正方形のステップカットをエメラルドカットと呼ぶ。主要産地であるコロンビア産のエメラルドがよりロスを少なくするためにこの形にカットされたことからエメラルドの名がついた。